― 発酵の呼吸を守る力 ―


発酵と呼吸について
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マットの中で起きている発酵は、静かで目立たないものですが、確かに「呼吸」をしています。
その呼吸を支えているのが、酸素です。
どれほど良い原料を使い、水分が適切に整っていても、酸素が届かなければ、微生物は本来の力を発揮できません。
ファームズでは、この酸素の流れを『発酵の呼吸』と考えています。
森の土の中では、酸素は一気に行き渡ることはありません。

落ち葉のすき間、朽木の繊維、土の粒と粒のあいだを通りながら、ゆっくりと地中へ染み込んでいきます。
その酸素を、微生物たちは少しずつ取り込み、木を分解し、栄養を生み出していきます。
マットの中でも、同じことが起きています。
酸素が適切に供給されていると、好気性の微生物が穏やかに働き、発酵は安定した状態を保ちます。
熱はこもりすぎず、ガスも自然に抜け、マット全体が落ち着いた状態になります。
一方で、酸素が不足すると、微生物は十分に呼吸ができず、嫌気発酵へと傾いてしまいます。

これは、森の中で起きている分解とは異なり、腐敗に近い反応です。
強い臭いが出たり、ガスがたまり、マットが重く締まってしまう。
見た目には分かりにくくても、中では成長の流れが滞ってしまいます。
だからこそ、ファームズのマットづくりでは、酸素の通り道を意識した設計を何よりも大切にしています。

そのための一つが、粒度の違いです。
粗めの木片は、マットの中に空間を作り、酸素が入り込む道を確保します。
微粒子は、水分と栄養を保持しながら、その周囲で微生物が働ける場を作ります。
この二つが組み合わさることで、水分を保ちながらも、息苦しくならない環境が生まれます。

さらに、攪拌(かくはん)の工程も、酸素を行き渡らせるための重要な役割を担っています。
やさしく空気を含ませるように攪拌することで、酸素がマット全体に均一に行き渡り、発酵のムラを防ぎます。
この工程は、単に「混ぜる」作業ではありません。
マットに呼吸を与える作業だと、ファームズでは考えています。

酸素の流れは、ブレンド設計とも深く結びついています。
発酵の進んだ層では、酸素が十分にあることで、低分子栄養が安定して生み出されます。
一方で、未発酵や一時発酵の層では、酸素がゆっくり届くことで、木の繊維が時間をかけて分解されていきます。
この酸素のめぐりがあるからこそ、マット全体が一体となって発酵し、長期間にわたって安定した環境を保ちます。

酸素は、目に見えない存在ですが、確かに成長を支えています。
木も、
微生物も、
幼虫も、
同じ空気を分け合いながら生きています。
マットの中で酸素がめぐるということは、環境の流れが整っているということなのかもしれません。

では、この呼吸によって生み出されたものは、どのように幼虫へと渡っていくのでしょうか。

水と酸素が整うことで、マットの中の発酵は安定し、環境はゆっくりと落ち着いていきます。
そしてその中で、次に起こる大切な変化があります。
それが、栄養の流れです。
次の章では、微生物によって生まれ、マットの中をめぐっていく栄養の流れについて、もう少し詳しくお話していきます。