― 育ちをつなぐ通り道 ―


マットづくりにおいての水分
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マットづくりにおいて、水分は「あるか・ないか」では語れない存在です。
多すぎてもいけない。少なすぎてもいけない。
そのわずかな違いが、発酵の進み方や幼虫の居心地を大きく左右します。
ファームズでは、水分を単なる「湿り気」ではなく、育ちを運ぶための通り道として考えています。

森の中では、雨が一気に地面へ落ちることはありません。
木の枝や葉を伝い、落ち葉や朽木にしみ込み、ゆっくりと土の奥へと染み渡っていきます。
その水は、微生物の呼吸を助け、木の分解を進め、栄養を土の中へ運んでいきます。
マットづくりも、まったく同じです。

水分が適切に保たれていると、微生物は酸素を取り込みながら、穏やかに働き続けることができます。
一方で、水分が多すぎると、マットの中から空気が押し出され、微生物は呼吸ができなくなります。
すると、発酵は乱れ、嫌な臭いが出たり、ガスがたまったりと、不安定な状態へ傾いてしまいます。

逆に、水分が足りないと、微生物の働きは弱まり、発酵そのものが止まってしまいます。
見た目には問題がなくても、中では「動きのない土」になってしまうのです。

ファームズでは、水分の目安として、手で軽く握るとまとまり、指で押すとほろっと崩れる状態を大切にしています。
この状態は、水が木の繊維に行き渡りながらも、空気の通り道が確保されているサインです。
水分が多すぎず、少なすぎないことで、マットの中にやさしい流れが生まれます。
この流れがあるからこそ、発酵は一気に進まず、時間をかけて安定して続いていきます。

そして、この水の流れは、ファームズが大切にしているブレンド設計とも深く関わっています。
粒の大きさが違えば、水の留まり方も変わります。
微粒子の部分は、水を抱え込み、しっとりとした居場所をつくります。
粗めの木片は、余分な水を逃がし、空気を含むスペースをつくります。

それぞれが役割を持ち、水が偏らずに、マット全体をめぐるようになります。
この「めぐり」があることで、栄養は溶け出し、微生物の働きによって運ばれ、幼虫の体へとつながっていきます。
水分は、発酵のための燃料で有、栄養を運ぶ道であり、環境を安定させる調整役でもあります。
だからこそ、ファームズでは水分を数値だけで管理するのではなく、手の感覚とマットの状態を大切にしています。


森の土が教えてくれたバランス
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森の土が教えてくれるのは、「ほどよさ」の重要性です。
しっとりしているけれど、重くない。
水を含んでいるけれど、息苦しくない。
そのバランスが保たれたとき、マットは"生きた環境"として力を発揮します。
しかし、水だけでは、育ちの流れは完成しません。

水の流れを支え、発酵を安定させる、もう一つの大切な要素があります。
それが、酸素です。
水分が整うことで、マットの中にはやさしい流れが生まれます。
その流れが、発酵を安定させ、環境全体を落ち着かせていきます。

しかし、水だけでは、この流れは完成しません。
次の章では、マットの中で起きている見えない呼吸=酸素の働きについて、もう少し詳しくお話していきます。