
― 自然のしくみを写すために ―
ブレンドにたどり着いたきっかけ
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ブレンドという考え方は、「よく育つから混ぜる」という思想から生まれたものではありません。
それはむしろ、森の中で当たり前に起きていることを、そのまま写し取ろうとした結果でした。
森を見渡すと、倒れた木は一本として同じ状態ではありません。
表面がやわらかく崩れているもの。
中はまだ硬さを残しているもの。
湿った部分と、少し乾いた部分。
菌が進んでいるところと、これから働き始めるところ。
森の土は、決して「完成された均一な状態」ではなく、時間の違う層が重なり合った場所です。
ファームズのマットづくりも、この自然の姿をお手本にしています。
一種類の素材、一つの発酵状態ですべてをまかなおうとすると、どうしても無理が生じます。
栄養はあるけれど、息苦しい。
通気性は良いけれど、落ち着かない。
発酵は安定しているけれど、持続しない。
どれかを立てれば、どれかが崩れてしまう ――
その繰り返しでした。
安定した環境に大切なもの
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そこで私たちが選んだのが、「役割の違う素材を組み合わせる」という方法です。
発酵の深いマットは、すぐに使える栄養を支える役目を持ちます。
一方で、未発酵や発酵の浅い木質部分は、空気を通し、時間をかけてゆっくりと変化していく力を持っています。
粒の大きさが違えば、水の留まり方も、酸素の通り道も変わります。
それぞれが単体では不完全でも、重なり合うことで、はじめて安定した環境が生まれてくる。
これがファームズが考えるブレンドの本当の意味です。
ブレンドマットの良さは、「栄養が多い」、「発酵している」といった目に見える数値だけでは語れません。
大切なのは、水が行き渡り、酸素が流れ、微生物が働き続けられる状態が保たれているかどうか。
ブレンドによって生まれるわずかな隙間や、質感の違いがマット全体に呼吸をもたらします。
その呼吸があるからこそ、発酵は一気に進みすぎることなく、時間をかけて、穏やかに続いていきます。
幼虫にとっても同じです。
食べたいときに、すぐに口にできる場所がある。
落ち着きたいときには、体をうずめられる場所がある。
息苦しさを感じれば、少し動くだけで、空気のある場所へ移動できる。
ブレンドマットは、幼虫にとっての「正解」を押し付けるのではなく、自分で選べる余地を残した環境です。
それが、ストレスを減らし、結果として安定した成長につながっていきます。
ファームズでは、用途や昆虫の種類に応じて、二種類あるいは三種類の素材をていねいに組み合わせています。
それぞれのマットは、単体でも役割を持っていますが、ブレンドされることで、初めて本来の力を発揮します。
この考え方は、一度決めて終わりではありません。
原料の状態や季節、発酵の進み方によって、微調整を重ねながら、常に「今の最善」を探し続けています。
ブレンドとは、完成形ではなく、森と向き合い続ける姿勢そのものなのかもしれません。
素材を重ねることは、ただ混ぜるということではありません。
それぞれの役割を活かしながら、全体の流れを整えていくこと。
そこに、ファームズのマットづくりの基本があります。
では、その環境を支えているもっとも重要な要素とは何でしょうか。
次の章では、マットの状態を左右する水分について、もう少し詳しくお話しししていきます。