
― 森をケースに宿すという約束 ―
ブレンドにたどり着いたきっかけ
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ファームズのマットづくりは、最初から「ブレンド」という答えにたどり着いていたわけではありません。
はじめは、とてもシンプルなところからの出発でした。
朽木を砕き、発酵させ、「よく育つ」と言われている方法を、ひとつひとつ自分たちの手で試していく…。
うまくいったと思える年もあれば、”同じ原料” ”同じ工程”なのに、なぜか思うような結果が出ない年もありました。
幼虫が途中で成長を止めてしまったり、環境は整っているはずなのに、元気が感じられなかったり。
お客様からのご相談を受けるたびに、私たちの中には、同じ問いが残り続けました。
「いったい、何が足りないのだろう」
栄養なのか。
発酵なのか。
水分なのか。
それとも、まったく別の何かなのか。
答えを探し続ける中で、私たちが改めて目を向けたのが、本物の森の土でした。
山に入り、倒木のそばにしゃがみ込み、朽木のまわりの土を、そっと手ですくってみる。
すると、そこには一様ではない世界が広がっていました。
乾いたところ。
しっとりしたところ。
少し冷たいところ。
ふかふかと空気を含んだところ。
ほんの指先ほどの範囲に、いくつもの「違い」が、当たり前のように同居していたのです。
そのとき、はっきりと気づきました。
森は、均一ではない。
だからこそ、命が育つのだ。
幼虫にとって大切なのは、ただ「栄養が多い場所」ではありません。
暗くて落ち着ける場所。
少し体を動かせば、息がしやすい場所や、湿った場所へ移動できること。
自分の状態に合わせて、環境を選べる"余地"があること。
それが、幼虫にとっての安心につながっているのではないか ――
そう考えるようになりました。
この気づきが、ファームズのマットづくりを大きく変えていきます。
ブレンドマットでのマットづくり
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「一種類の土で、すべてを満たそうとしない」
「違いを重ねることで、環境をつくる」
ブレンドマットとは、ただ複数の素材を混ぜた土ではありません。
粗い木片がつくる、空気の通り道。
微粒子が支える、しっとりとした居場所。
発酵が進んだ部分が担う、すぐに使える栄養。
まだ形を残す木が、時間をかけて効いてくる力。
それぞれが役割を持ち、幼虫がその中を自由に行き来できる ――
そんな「小さな森」をケースの中に用意するための設計です。
この考え方にたどり着くまでには、長い時間がかかりました。
発酵が強すぎて失敗したこと。
栄養に頼りすぎてバランスを崩したこと。
逆に、驚くほど安定した結果が出た配合。
それら一つひとつを記録し、幼虫の様子と照らし合わせながら、少しずつ、少しずつ形にしてきました。
ファームズのブレンドは、計算式だけで導き出したレシピではありません。
森を観察し、微生物の働きを感じ、幼虫の反応に耳を傾け、
そして、使ってくださる方の声と重ねながら育ててきた、時間そのものです。
森の縮図とは、土を作ることではなく、命が安心して流れていく『場』を整えること。
この約束を胸に、ファームズは今日もブレンドに向き合っています。
自然の森が最初からブレンドであるように、マットづくりもまた単一では成り立ちません。
さまざまな素材が重なり合うことで、はじめて安定した環境が生まれていきます。
では、なぜブレンドすることで育ちやすい環境が生まれるのでしょうか。
次の章では、ブレンドが持つ本当の良さについて、もう少し詳しくお話ししていきます。
ファームズのマットの考え方
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この章でお伝えした考え方は、ヘラクレスマットや発酵カブトマットをはじめとする、
ファームズのブレンドマットづくり全体に共通しています。